Nihon Cyber Defence

ソフトウェアが変える戦争のかたち

ソフトウェア主導型戦争:大西洋評議会の洞察

Futuristic world map showing global cyber operations and digital warfare networks, highlighting software-driven military strategy.

ソフトウェア主導型戦争の未来。

日米および同盟国がサイバーレジリエンス、AI、そしてデジタル相互運用性を基盤とする新たな戦場に対応すべく、体制強化を進めている

新たな戦場へ:ソフトウェア技術と戦略的優位性

各国の軍事力の未来は、ソフトウェア技術の開発速度と導入速度、さらにそれらをいかに戦力に統合するかに大きく左右されます。米国が技術力で他国に遅れを取る中、中国はその導入スピードを急速に高めています。ソフトウェア技術における競争力の差は、単なる調達力にとどまらず、国家の安全保障そのものに深刻な影響を及ぼしています。

大西洋評議会(Atlantic Council)による報告書

大西洋評議会(Atlantic Council)の「ソフトウェア主導型戦争(Software Defined Warfare)」委員会は、今後の戦争におけるソフトウェア技術の重要性を明確に示しています。米国の元国防長官マーク・エスパー氏、元国防副長官代理クリスティーン・フォックス氏、そしてパデュー大学学長ムン・チアン氏は、1年以上にわたり共同で報告書を作成しており、その過程で60人以上の専門家へのインタビューが行われています。

米国ニュースメディア「Axios」担当記者コリン・デマレスト氏によれば、報告書で示された主なポイントは以下の通りです:

イノベーションの遅れ

米国の軍事は、依然として現代の技術革新のペースに適応できていない調達システムに依存しており、この状況が重大なリスクを引き起こしています。

専門知識の不足

国防総省(DoD)は、人工知能(AI)、自律技術、サイバー技術といった重要技術分野において、十分な専門知識を持つ人材が不足しており、これが新技術の効果的な活用を妨げる要因となっています。

巻き返しの必要性

米国は、ソフトウェアやサイバー分野での長期的な改革だけでなく、即効性のある短期戦略の実行が急務とされています。特に、中国がデジタル分野での優位性を強化する中、技術的な遅れを取り戻し、再び主導的な地位を確立する必要があります。

軍間の連携強化

陸軍、海軍、空軍、宇宙軍、海兵隊といった各軍の技術力を効果的に統合・監視するために、プログラム執行部の設置が推奨されています。これにより、各軍の技術資源を一体的に活用し、全体の戦力を向上させることが期待されます。

独自開発から既製ソフトウェアへの転換

DoDは、独自のソフトウェア開発にこだわるのではなく、既製の商用ソフトウェアの活用を優先すべきでしょう。独自開発には多大なコストと時間がかかり、リスクも大きいため、既存技術を効果的に活用する方が現実的です。

ソフトウェア専門人材の育成

DoDは、ソフトウェアに精通した専門人材の確保が急務です。数百人規模での専門家採用を進め、各軍の本部や戦闘司令部(COCOM)に配置することが求められています。

結論として、国防総省におけるソフトウェアの導入は一定の進展を見せているものの、依然として部門ごとに独立した形で取り組んでおり、全体を見据えた戦略的な視点が欠如している状況です。ロボットや自律兵器、グローバルサプライチェーンが戦局を左右する現代においては、コードの迅速な更新や情報の正確な共有が、戦略的優位性を確保するための鍵となります。

日本のデジタル防衛の進化:スピード・主権・同盟

世界全体で広がりつつあるソフトウェア主導型戦争への移行は、日本にとっても特に重要な課題です。日米安全保障同盟が強化される中で、日本は自国の防衛態勢を抜本的に見直しており、スピード、機動力、そして自国での技術開発を優先課題と位置付けています。その一環として、防衛装備庁(ATLA)では調達プロセスの効率化や先端技術の導入速度の向上をめざした改革が進められています。さらに、新たな研究開発拠点の設立や、グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)への積極的な参画を通じて、次世代の防衛協力体制においてより積極的な役割を果たすことを目指しています。

政策立案者や産業界のリーダーにとって、これらの動きは、日本が同盟国との相互運用性を確保しつつも、AIや自律技術、ソフトウェア中心の防衛システムにおける自律的な能力を育成しようとする戦略的な意図を示しています。

ソフトウェアが国家安全保障の未来を支える

ソフトウェア主導型戦争はもはや仮説ではなく、現実の戦略課題として各国の防衛政策に影響を与えています。これに伴い、各国は防衛態勢や同盟国との協力の在り方を見直しつつあります。米国がソフトウェア関連のシステム的な課題に取り組む一方、日本を含む同盟国も防衛技術の近代化を急速に進めています。国家安全保障においては、俊敏なソフトウェア駆動型のエコシステムがこれまで以上に重要な要素となりつつあり、サイバーレジリエンスはもはや物理的な武力と同等の戦略的重要性を持つようになっています。

NCDの戦略的専門知識でサイバーレジリエンスを強化

日本サイバーディフェンス(NCD)は、国家政策や先端技術に精通し、実運用に基づく深い知見を有するサイバーセキュリティ専門のコンサルティング会社です。政府機関や重要インフラ企業をはじめ、業界を問わず、急速に変化するサイバー環境への対応と将来を見据えたサイバー能力の構築を支援しています。

ソフトウェア技術を中心とした防衛戦略に関するご相談は、ぜひ弊社までお問い合わせください。
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John Powers
ジョン・パワーズ

日本サイバーディフェンス株式会社 シニアエグゼクティブアドバイザー

国家安全保障、サイバネティクス分野の専門家。軍および諜報機関で数十年にわたり指導的役割を果たしてきた。センチネル・エグゼクティブ社の最高執行責任者(COO)や豪州大学院の准教授など、活動は多岐にわたる。

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サイバー成熟度評価 ​

日本サイバーディフェンス株式会社(NCD)では、組織のサイバーセキュリティ能力を包括的に診断する「サイバー成熟度評価サービス」を提供しています。このサービスは、現状の課題や強みを明確化し、組織が直面するリスクに対して最適な対策を講じるための土台を築くものです。さらに、全体的なセキュリティ態勢を強化するための戦略的なロードマップをご提案し、実効性のある改善計画をサポートします。

サイバーセキュリティフレームワーク(NIST)

国立標準技術研究所

サイバー評価フレームワーク(CAF)

国家サイバーセキュリティセンター

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