Nihon Cyber Defence

日本企業がランサムウェアの脅威を克服する方法​

実用的な解決策で構造的障壁を乗り越え、サイバーレジリエンスを実現する

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Nippon.comに掲載された名和氏の2024年の最新分析によれば、ランサムウェア攻撃の頻度と複雑さの増加に伴い、日本の組織が抱える深刻な脆弱性が明らかになっています。これらの課題は、迅速な対応と復旧、法規制の遵守、業務継続性の維持において、果敢な行動が求められていることを示しています。

日本におけるランサムウェア攻撃の現状​

名和氏の分析によると、日本の組織がランサムウェアの脅威に対してレジリエンスを高める上で、以下の4つが主な障壁となっています:

  1. 稟議の壁:意思決定の遅さが重要な対応の遅れを引き起こし、被害を拡大させる。
  2. コストの壁:セキュリティへの投資が後回しにされることで、結果的にリスクが増大し、損失を招く。
  3. ローテーションの壁:頻繁な人事異動がサイバーセキュリティ専門家の育成や知識の蓄積を妨げる。
  4. 沈黙の壁:情報公開への消極的な姿勢が、被害の拡大や迅速な対応の妨げになる。

これらの構造的な課題は、ランサムウェア攻撃による被害の拡大、早期復旧の遅延、そしてコンプライアンス確保の困難さを助長しています。

ケーススタディ:最近の攻撃から学ぶ教訓

大手出版社グループの不透明な対応

ある大手出版社グループは、ランサム攻撃による情報漏えいを3週間にわたり公表しませんでした。この対応は事態の収束を目的としていたと見られますが、国際基準であるGDPR(一般データ保護規則)では72時間以内の情報公開が義務付けられており、この対応が国際基準とは大きく異なるものであったことは明らかです。

地方スーパーチェーンの復旧作業が長期化

ある地方スーパーチェーンがランサムウェア攻撃を受け、発注システムが2か月以上も停止しました。これにより、強固なバックアップ体制と対応プロトコルの重要性が浮き彫りになりました。

印刷・ITソリューション企業のバランスの取れた対応​

ある印刷会社はランサムウェア攻撃を受けた際、比較的迅速に情報更新を行い対応しましたが、初期段階で情報漏えいの可能性を正確に見極めるという課題に直面しました。この事例は、高度な分析ツールを活用して迅速かつ正確な情報収集を行うことの重要性を示しています。

課題をチャンスに変えるビジネス・ソリューションへの道

名和氏の見解は、組織が優先すべき課題に直結しています:

印刷・ITソリューション企業のバランスの取れた対応​

プロアクティブな脅威検知機能や透明性のあるコミュニケーション基準を導入することで、GDPRなどの規制を遵守しつつ、ステークホルダーとの信頼関係を築き、業務中断を最小限に抑えることが可能です。

リソース制約と脅威検知のバランス化​

日本企業は、セキュリティ投資を「コストセンター」ではなく「ビジネスイネーブラー」として捉えるべきです。サイバーセキュリティを戦略的なビジネスニーズとして優先させることで、業務効率を損なうことなく、組織のレジリエンスを強化できます。

戦略的アドバイス

これらの課題を解決するためには、包括的なアプローチが求められます:

  1. 意思決定の集権化: 承認プロセスを効率化し、危機発生時に迅速な対応ができる体制を構築する。
  2. セキュリティへの戦略的投資: サイバーセキュリティを任意のコストとしてではなく、ビジネスの成長に欠かせない重要な要素として位置づける。
  3. 専門知識の開発: サイバーセキュリティリーダーの定着率を向上させ、彼らに権限を与えながら、組織全体の知識基盤を強化する。
  4. 透明性の高いコミュニケーション:国際基準に基づき、積極的な情報公開を行うことで、顧客やステークホルダーからの信頼を深める。
  5. 経営層のリーダーシップ: サイバーセキュリティを経営陣の優先事項として掲げ、統合的なリスク管理をリーダーシップのもと推進する。

日本の組織は、国内外の事例から学ぶことで、サイバーセキュリティのレジリエンスを強化する重要な機会を得ています。構造的な障壁を取り除き、セキュリティをビジネスの推進力として優先することで、ランサムウェアのリスクを軽減するだけでなく、グローバル経済においても強固な競争力を確立することが可能です。この進化を支える鍵となるのは、リーダーシップの発揮、文化的な変革、そして戦略的な投資です。これにより、日本の組織は新たな時代の課題に対応し、持続的な成長を実現する礎を築くことができます。

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名和利男

日本サイバーディフェンス シニアエグゼクティブアドバイザー

軍務およびJPCERT/CCでの経験を経て、2018年に日本サイバーディフェンス株式会社に入社し、CSIRTおよび脅威インテリジェンスのアドバイザリーを専門としている。

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サイバー成熟度評価 ​

日本サイバーディフェンス(NCD)では、組織のサイバーセキュリティ能力を包括的に診断する「サイバー成熟度評価サービス」を提供しています。このサービスは、現状の課題や強みを明確化し、組織が直面するリスクに対して最適な対策を講じるための土台を築くものです。さらに、全体的なセキュリティ態勢を強化するための戦略的なロードマップをご提案し、実効性のある改善計画をサポートします。

サイバーセキュリティフレームワーク(NIST)

国立標準技術研究所

サイバー評価フレームワーク(CAF)

国家サイバーセキュリティセンター

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