- サイバーセキュリティ・リーダーシップ
- 3月 17, 2025
サイバーセキュリティ人材不足への対応——未来を創る教育戦略と革新
現行の取り組みと次世代の育成への道筋

サイバーセキュリティ分野の人材不足が深刻化するなか、教育こそがこの世界的課題を解決する鍵となります。特に日本ではその影響が顕著であり、次世代のサイバーセキュリティ人材を育成するための革新的な施策が進められています。しかし、こうした取り組みだけで人材不足という構造的な課題を克服できるのでしょうか?
その対策の一環として導入されたのが、「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」制度資格(RISS)です。前回の投稿でも触れたように、高度な専門知識を持つ人材の育成を目的としていますが、試験の難易度の高さや実務での活用が限定的であることが普及の障壁となっています。こうした課題を克服することで、RISSはより実践的で効果的な人材育成のツールへと進化し、日本のサイバーセキュリティ分野を支える重要な役割を果たす可能性を秘めています。
しかし、サイバーセキュリティ人材の不足に対応するには、資格制度の整備だけでは不十分です。教育システム全体の変革が求められています。政府の未来教育創造会議は、理工系学部の学生割合を現在の35%から50%へ引き上げるという大胆な目標を掲げています。その一環として、デジタル関連分野の大学プログラムの拡充が進められており、2023年には26の大学が新たに情報系学部・学科の定員を増員しました。
こうした取り組みは意味のあることですが、受け入れ能力の限界が依然として課題となっています。情報系学部の志願者数は過去10年間で34%増加しており、定員を大幅に上回る状況が続いています。今後は、教育機関の拡充と学びの質の向上を同時に進めることで、サイバーセキュリティ分野における人材育成の加速が求められます。
高校や高等専門学校(高専)も、サイバーセキュリティ人材の育成に向けた取り組みを本格化させています。その先駆けとなっているのが、国立高等専門学校機構(KOSEN)のK-SECプログラムです。このプログラムでは、体系的かつ段階的なカリキュラムを採用し、約5万人の学生全員に基礎的なセキュリティ教育を実施。さらに、20%の学生には中級レベルのトレーニング、最上位1%には高度なスキル教育を行っています。このようなモデルを高校や大学にも拡大すれば、日本のサイバーセキュリティ人材の層を厚くし、専門人材の育成を加速することができるでしょう。
しかし、サイバーセキュリティの基礎教育は依然として大きく遅れをとっています。特に、小中学校といった子どもが最も関心を持ちやすい時期の教育に、サイバーセキュリティの概念がほとんど取り入れられていないのが現状です。また、政府主導のGIGAスクール構想により、すべての小学生にデジタルデバイスが配布されましたが、サイバーリテラシー教育はほとんど整備されておらず、実践的な学びの機会が不足しています。このギャップを解消するには、官民が連携し、魅力的で実践的なカリキュラムを開発するとともに、企業の知見を積極的に活用することが不可欠です。
世界的に見ても、学校でのサイバーセキュリティ教育の機会が限られていることが、人材不足の大きな要因となっています。英国と米国の調査では、72%の保護者が「学校でのサイバーセキュリティ教育の不足」が、専門人材の育成を妨げていると指摘しています。この課題に対処するため、日本は海外の成功事例から学ぶことができます。例えば、英国のCyberFirst(サイバーファースト)プログラムは、学生が早い段階からサイバーセキュリティの知識を習得できる環境を提供し、基礎知識から専門スキル習得までの明確な学習ルートを示すことで、次世代の専門人材の育成を推進しています。
次回の投稿では、英国の成功事例をもとに、日本がどのようにこのモデルを適用し、発展させることができるのかを探ります。
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